池端友佳理
池端ナーサリースクール、設立の経緯
日本を心から愛しているにもかかわらず日本語を失ってしまった日系三世の父親と、何の不満もなかった日本での生活に終止符を打ち、カナダへ嫁いできた母親が、最も大切な我が子のためにこのカナダで伝えたいと考えたのは、何よりも日本の言葉、文化、習慣でした。
息をするかのように自然に日本を感じる事が出来る環境があれば…。そう願う親達は私達だけではないはず、という親の想いを形にしたのが、現在の池端ナーサリースクールです。
カナダで保育するきっかけは、1992年私自身に子供が生まれた際、日本語の環境の中、安心して乳児を保育出来る専門知識を持ったベビーシッターの確保が難しかった事などから、同じ様な環境の友人や親戚の乳児をお預かりした事が始まりでした。その後、ベビーシッターを始めた翌年1993年には、自宅を改造しホームデイケアセンターを開始しました。1995年にはオンタリオ州認可ホームデイケアセンターとして登録。それから5年間の間にデイケア施設を4軒に増設したにも拘らず、入所ご希望者は後を絶ちませんでした。
その様な中、日系文化会館がウィンフォードから現住所に移転との話を聞き、これ以上最適な場所はないと確信し、州認可終日日本語保育園の開園計画書を会館に提出したのです。
『日系文化会館』−それは、私達夫婦以上に様々な経験を積まれてきた日系社会の方々の、汗と涙の結晶の場であり、その一角を確保できた事にも大きな意義があると考えています。池端ナーサリーはとてもユニークです。トロントに来て間もない新移住者や駐在員家族など一時的な滞在者、国際結婚などの理由で移住する家族、そして、日系2、3世の日系人や非日系人など、両親が日本語を話さない人達。これら様々に異なるバックグランドを持つ子供達が、ナーサリーと言う、一つの場所で一緒に仲良く日本文化や習慣、言葉を自然に学んでいます。
「日本語を話せない親の子供が日本語を話せるはずがない」と言うのは、もう一昔前の話と言えるでしょう。私どもナーサリーでは誰もが違和感を抱く事なく、自然に『日本』に溶け込んでもらえる環境を提供しているのです。昔ながらに受け継がれてきた日本人特有の感謝の気持ち、他人を気遣う思いやり等は押し付けて躾るものではないですから、園児達にはそれらを生活の中から自然に身に付けて欲しいと切に願い、日々取り組んでおります。
『国際人を育てる』夢と希望を胸に、そして子供達の笑顔とともにこれからもより良い環境作りに励み、未来へと羽ばたいて行きたいと思っております。